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元ドライチ左腕の三男坊。4年夏に全国デビュー、5年秋に関東準V&110㎞!!

2026.02.20注目戦士
元ドライチ左腕の三男坊。4年夏に全国デビュー、5年秋に関東準V&110㎞!!

【2026注目の逸材】

いとう・ほまれ

伊藤 誉

[山梨/新6年]

ラウンダース

※プレー動画➡こちら

【ポジション】投手、遊撃手

【主な打順】一番

【投打】右投右打

【身長体重】154㎝52㎏

【好きなプロ野球選手】モイネロ(ソフトバンク)、ボー・ビシェット(ブルージェイズ)、オジー・スミス(元カージナルスほか)

※2026年2月15日現在

力強いオーバースロー

 新6年生(現5年生)で最速110㎞。国内全土に目を広げれば、さらに上をいく投手もボチボチいることだろう。しかし、新チームの最高峰となる舞台にまで勝ち進み、またそこでの球場表示で「110㎞」超えとなると、この右腕しかいないのかもしれない。

 昨秋の新人戦で山梨王者に輝き、続く関東大会で準優勝を遂げたラウンダースの背番号1、伊藤誉だ。身長は150㎝強と取り立てて大きくはない身体で、投打にわたってピカイチのパフォーマンスを披露した。

新人戦の関東大会は1都7県の王者による、最高位のトーナメント戦。古くは全日本学童大会マクドナルド・トーナメントのメイン会場で、県高校野球のメッカである茨城・ノーブルホームスタジアム水戸が舞台

 まずは初日の1回戦のラストゲーム。群馬・玉村ジュニアベースボールクラブとの第4試合に先発すると、プレイボール直後に109㎞を投じた。さらに2球目で110㎞をマークし(=上写真)、場内をざわつかせた。1年前は3ケタの「100㎞」に達した投手は1人のみ。今大会もわずか3人で、「110㎞」超えは伊藤だけだった。

「打ち取るにはスピードも大事。まだ自分にはノビシロがあると思っています。6年生のうちに、125㎞まではいきたい」

 100㎞台の速球で押しまくって勝利した伊藤はそう話したが、マウンドでは電光掲示板の数値を振り返らなかった。抜き球もゼロではなかったが、9割以上は右腕を力強く振り下ろしてのストレート。試合中にそういう助言もしていたという日原宏幸監督は、“速球一本槍”についてこう語る。

「ピッチャーはそのほうが投げやすいし、相手さんのバッターを見ながら押せているときはそれでいけばいいと思います」

 指揮官は球数も踏まえつつ、「予定通り」の継投で初戦をものにした(リポート➡こちら)。

 無安打1四球と、ほぼパーフェクト投球の伊藤は4回50球で一度マウンドを譲り、遊撃守備へ。そして最終6回に再登板すると、被安打ゼロのまま、最後の打者を104㎞で空振り三振に斬ってみせた。

日原監督は山梨日本電気(NEC山梨)の軟式野球部で1992年国体の優勝投手に。「投手1人で野球をやっているんじゃないよ、というのは常に言っていますので伊藤も分かっていると思います」

 計5回を63球で被安打0、与四球1の7奪三振。際立ったのは球のスピードだけではない。コントロールも著しく安定していた。日原監督は、「経験値」をその要因に挙げている。

「1つ上の代が2人しかいなくて、伊藤は4年生の秋からエースとしてやってきたんですけど、上級生に結構打たれたんですよ。それで打たれないためには、と本人も考えたでしょうし、私も指導しました。投球フォームもそうですし、配球を含めたバッターの打ち取り方とか…」

 伊藤本人も“過去イチ”の苦い思い出として、昨夏の県大会(山日YBS杯)の決勝のマウンドを挙げている。現6年生主体の大会で、チームは若草エコーズに3対7で敗北。5年生の伊藤は「たくさん打たれたし、苦しかった」と語るように、序盤から相手打線につかまって失点を重ねた。

「キツかったけど、負けたことはしょうがないので、上を向いてがんばるように気持ちを切り替えました」

身も心もタフネス

 下級生時代からトップチームで場数を踏めば、無垢な輝きは失せる。でも、無数の傷を負ってきた分だけ、身も心もタフになるのだろう。伊藤は4年生の夏に、2歳上の兄・航との三遊間コンビで全国デビュー。

 チームにとっては2018年(16強)以来の全日本学童大会で、1回戦は9対0と大勝し、2回戦は3対4でサヨナラ負け。伊藤は「五番・三塁」でフル出場し、守りはノーエラーを貫くも、打っては6打数無安打1四球とチームに貢献できなかった。

2024年6月2日、全日本学童山梨予選の決勝。三遊間を組む伊藤兄弟の兄・航が終盤はマウンドへ(上)。そして逆転サヨナラで優勝し、6年ぶり2回目の全国出場(下)

「2年前の全国の経験は結構、生きています。あのときは2個上の代でやってたので、レベルが高いと感じでいたし、なかなかついていけなかったけど、今はレベルの高さを感じることはないので」(伊藤)

 晴れて最高学年となって迎えた昨秋の新人戦は、ほぼ意のままにプレーできたという。関東大会の準決勝では、全国区の強豪・豊上ジュニアーズ(千葉)の打線につかまった。5回から救援して逃げ切るも、自慢の速球を狙い打たれて3失点。被安打5のうち4本は長打だった。

 新チームの始動後、こんなに打たれたのは「初めて」。だが、そのマウンドでも堂々としていた背番号1は、打たれても打たれても“速球一本槍”を貫いた。続く決勝も、2回途中で降板するまで右腕を全力で振り続けた。そして閉会式後、銀メダルを胸に晴れやかな表情で言った。

「自分的には楽しかったです。新チームになって県外とはやってなかったので、いろんなチームと関われて、喋ったり戦ったり。そういうのが全部楽しい大会でした」

関東大会での打撃は、先頭打者二塁打(=下連続写真)に始まって8打数4安打の打率5割。2盗塁も決めている

伊藤家の野球

「野球を始めたきっかけ? お父さんがプロ野球選手だったから。小さいころにお兄ちゃんからそれを聞いて、自分が引き継ぎたいと今も思っています」

 伊藤は三兄弟の末っ子で、長男の颯(現中3)もラウンダースのOB。そして父・彰さんは「世代No.1投手」とも言われた、最速147㎞のドライチ左腕だった。1995年、山梨学院高の夏の甲子園初出場と1勝に貢献し、3年時の翌96年夏も背番号1で甲子園に戻ってきた(2回戦敗退)。そして秋のドラフト会議では、ヤクルトから1位指名された。

「プロではぜんぜん何もできませんでした」と彰さん。肩にメスを入れるほどの重度のケガに悩まされ、4シーズンでユニフォームを脱いだ。その後は山梨学院大を経て、同大学の硬式野球部のコーチに。2014年から3年間は指揮をとり、初年度に大学選手権(全国大会)へチームを導いている。

「兄の2人もホマレ(三男坊)も、小さいころから野球が身近な存在としてあったんだと思います。一緒に野球場に行ったりもしてましたので。野球が好きという気持ちを大事にしてもらって、がんばってもらいたい。それだけですね」(彰さん)

 野球について。伊藤家では日常的に会話のネタになるが、親から子への命令や練習への介入はまったくないという。プロ出身で学生の指導経験も長い父は、勤勉で投打のメカニクスやフィジカルにも精通。でもプライベートでは「求められれば伝える」というスタンスに終始している。

「ラウンダースの選手たちは、日原監督のご指導で力を伸ばしていると思いますし、ホマレもその中の一人。まだまだこの先も積み上げていくことが大事なので、チームの指導者、スタッフの皆さんに感謝しかないですね」

新チームでは非登板時は遊撃を守る。打球へのアプローチからステップ、スローまで基本に忠実だ

 どこまでも控えめが逆に、信頼と尊敬を集めてやまない。そんな父が、伊藤は大きくて眩しくて仕方がないようだ。

「チーム練習がない平日(月火金)は、いろんなことをやっています。身体のケアとか柔軟性を高めたり。身体の使い方とか手足の動かし方とか、そういうのをお父さんに教えてもらって覚えたり、自分から案を出してやったり」

 要は発育発達段階における、身体機能と基礎体力の向上。これに重きを置いた自主トレーニングで、110㎞を投じる土台も築かれているようだ。

通算本塁打は少なくとも30本超。バッドヘッドの走りと修整力を指揮官は高く評価しており、「センター方向!! と指示をするとその通りによく打つんです」(日原監督)

 父は息子の質問に答える際に、あえて「大学生に伝えているような内容や表現」もそのまま口にするという。

「スタートポジションで股関節に乗せるとか、地面を噛んで投げるとか。小学生なので理解できないことも当然あると思うんですけど、『なんだろう!?』という興味をもってほしいんですよね。ずっとその繰り返しなので、例えば神宮へ六大学野球を見に行っても『一本足でどうやって立っている』とか、『どのタイミングでヒザが曲がる』とか、子どもなりにチェックポイントができている感じです」(彰さん)

日本一!! 宇宙一!?

 日原監督は、伊藤をひと言で「野球が大好きな野球小僧」と評している。興味の喚起という、父の思惑通りに成長しているようだ。創立14年のラウンダースのOBから、甲子園球児はすでに4人生まれている。「プロ」の扉を初めて開くのは、伊藤になるのか。

「私もそうなってほしいという願いがありますし、そのためにできることは少年野球の段階で、しっかりと身体づくりをしながら一生懸命に野球すること。チームで戦う上でも大事な存在なので、やってもらわないと困りますけど、ケガだけはさせないように注意したいと思います」(日原監督)

 伊藤が目指しているのは、この2026年夏の日本一。野球関連の動画を見るのも大好きで、その指導法に共感して行きたい高校もすでに決まっているという。さらにその先は――。

「メジャーで通用するような選手になりたいです。大谷翔平選手(ドジャース)くらいすごくて、それも上回るくらいすごい選手になりたい」

 宇宙一!!という、テレビの“迷”解説が目下のミラノ・コルティナ冬季五輪であったが、大谷の上をいくということはそういうことでもあるだろう。大志の背景には父への想いもある。

「お父さんには、いつもいろいろ手伝ってもらってきているから、恩返しするためにも結果を出したい」

 言われた父のほうは、どこまでも器が大きい。3兄弟の未来についてこう語っている。

「野球を楽しく、そして真剣に取り組んでもらえれば。それが何よりで、それ以上は何もないですね。どんなことでも楽しむことや真剣に取り組むことが、その先につながっていくと思っていますので」

(動画&写真&文=大久保克哉)

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